空を翔びたい
「……帰ろっか」
紅葉がスパイクの袋とバックを持って立ち上がる。
その瞬間、紅葉の髪が夕日に溶け込んで、有名な画家の絵でも見ているようだった。
綺麗すぎて、怖い。
消えてしまうんじゃないか。
なんて、そんなこと口にも出せず、バカにしたように紅葉を見た。
「お前の頭、空と同化してるぞ」
「えっ!」
くしゃっと自分の頭を触ってから、驚いたように目を見開いて、間延びした変な沈黙の後、微かに唇を動かした。
「ねぇ、今あたし、空触ってるみたいに、見える?」
さっきまでとはまるで別人のような紅葉の、笑顔。