空を翔びたい




病院に着くと休む間もなく、紅葉の病室に向かって走った。


病院の夜は怖くて、廊下なんて特にヒールの音が聞こえたらどうしようとか、窓から血だらけの女の人が、なんて。


きっと、いつもだったら考えて足元が竦み上がっていたはずだ。



でも、今はそんな場合じゃない。




「紅葉っ!」



病室のドアを勢いよく開けると、ベッドには掛け布団を深く被って背を向けて眠る紅葉がいた。


良かった…



そう思った瞬間、あることに気づきハッとしてベッドに近寄り掛け布団を捲る。

そこに寝ていたのは、
紅葉ではなく、大きなテディベアのぬいぐるみだった。






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