空を翔びたい
──は?と、まぁ分かりやすい表情で顔を上げた紅葉。
俺は服の袖で紅葉の涙やら鼻水やらを拭きながら、昔のことを思い出す。
「だって、そうだろ?木から降りれないお前を助けるのは俺だし。夜中に呼び出されて、星を見て、帰りは危ないからって見送るのも俺。それから……──」
腕を鍛えれば翔べるのでは?とか言って1ヶ月も腕を鍛える筋トレに付き合わされたこともあったし。
神社では、必ず「紅葉が鳥になれますように」か「空に行けますように」のどちらかをお願いしなくちゃいけなかった。
空に虹が掛かれば渡りたいとだだを捏ねられ、ネチネチと文句を言われるのは俺だった。