150年後のラブレター
季節は春。
朝の散歩にはちょうど良い気温に、睦月は鼻歌を溢していた。
地元とは違った街並みに、自分は京都にいるのだと心の底から感じ取ることができる。
京都には、思い出がありすぎる。
睦月は何かを企んだ笑みで手を上げた。
すると、走っていたタクシーが待ってましたというかのように睦月の前で止まった。
「すみません。西本願寺から一番近い海までお願いします」
久しぶりの台詞。
そんな自分が少しおかしくて、微笑んだ。
そしてタクシーに乗って3分後、運転手のおじさんのお喋りタイムが始まった。
「お姉さん、観光?」
「あっはい」
「でも何で海?せっかくやから西本願寺行けばいいのに」
バックミラー越しに目が合う。
デジャヴだ。