この手に握るモノ
◆◇◆◇◆

俺の記憶の始まりは


俺より年下の少女の泣き顔だ。


赤色の長い髪を高く2つに結っている


青色の瞳の少女。


彼女の涙の浮かんだ瞳を見ると


どこか懐かしく、


どこか切なかった。


《泣かしてはいけない》

それだけがわかった。


それだけしかわからなかった…


自分の名前も


髪や瞳の色…


何にもわからなかった。

「どこか、痛いところ…ある?
カミル」


涙を拭って少女が尋ねてくる。


「カ…ミ…ル?」


名前らしき単語を聞き直す。


「うん…貴方の名前が
カミル
…剣がね得意なの…」


少女は涙を溢れさせながら笑う。


「あたしの名前は
ヴリュエル。
貴方の記憶を取り返す手伝いをする為にここにいるの…」


「ヴリュエル?
記憶を取り返す?」


訳がわからない。


俺が何も覚えていないのは誰かに記憶を奪われたから?


それを一緒に取り返す?


こんな少女が?


「貴方の名前はカミル。
年は16歳。
剣の腕は町1番。
腰に下がっているのが、愛刀…」


少女が俺について次々と話していく。


「あたしは、カミルにぃ……
カミルより2つ下の14歳。一応だけど魔術師…」


なのに自分の情報は少ない…


「まだあたしの事信じてなんて言わないけど…
あたしから逃げないで欲しいの…
心配させないで…」


彼女を信じられないはずがない


彼女は


俺が無事で


俺が生きていて


凄く安心しているんだ…
< 10 / 11 >

この作品をシェア

pagetop