この手に握るモノ
序章
生い茂る草木を掻き分けて前に進む青年と後に続く少女が各1人ずつ。


「カ~ミ~ル~!
お腹空いたぁ!」


広い草むらに響き渡る高音質の声…


「お腹空いた、空いた、空いた、空いた、空いた、す…」


「黙れ!」


高音質の声を止めたのは冷たいくらいの低音質な声。


「だって、お腹空いたんだもん!」


少女はしゅんとしつつも、睨みを効かせる。


「先刻休憩したばかりだろう?ヴリュエル」


少年は呆れている。


「さっきって言ってもだいぶ前だもん!」


頬を膨らませて少女は横を向いてしまう。


少年は仕方なくその場の草を踏み馴らして布を敷く。


「…5分だぞ…」


「わーい!
カミル大好き!」


少女は少年に抱きついた。
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