この手に握るモノ
「娘ぢゃない!てか、カミル遅い!あたしが魔物に襲われたら……あれ?カミル、血がついてる」


数メートル先の木の影から少女が姿を現した。


「お前じゃなく、俺が襲われたのさ…」


溜息をついて、面倒臭そうにするが、俯いたその顔は安心したように微笑んでいた。


「うそ!大丈夫なの?」


一方、少女は慌てて駆け寄って来る。


「相手のかえり血を浴びただけだ…」


あちこちチェックしようとする少女に少年は大丈夫と離れる。


「大丈夫なら、血を拭こうよ…」


少女が掌を上に向けると、そこに水が溜まる。


その水で布切れを濡らして少年の汚れた頬や手などを拭う。


「カミルは、自分大事にしなさ過ぎ!」


「お前に言われたくないな…だいたい、お前がいなければ、俺が旅する意味がないだろう」


呆れた深い溜息に少女はらしくなくしゅんとする。


「カミルは…記憶を取り戻したくなかった?」


「…今更だ…記憶が必要だから俺といるんだろう?お前が沈んでどうするんだ?」


少女の頭をポンポンっと叩くと、


「ほら、行くぞ」


先へ歩き出した。


「うん!」







少年『カミル』と

少女『ヴリュエル』の

大切なモノを探す旅はまだ、始まったばかり…

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