この手に握るモノ
一章
「おじさん、コレとコレ、あと、コレもちょーだい」


色々な食材の並ぶ市場で、果物屋の前でヴリュエルは指をさす。


「すいません、コレだけで結構です」


ヴリュエルを後ろへ押しやり、店主に告げる。


「えーなんで?」


カミルの脇の下から顔を覗かせて抵抗する。


「苺に桃に李に…そんなに買っても腐らせるだけだろう…だいたい持ち運びが大変だ…」


「だって…」


「苺だけで我慢しろ…」


店主から苺を受けとると、カミルは歩き出す。


「待ってよ!」


置いて行かれないように、慌ててあとを追いかける。


が、急に止まったカミルに衝突してしまった。


「ちょっと!人は急に止まれないの!止まるなら止まるって言ってよ!」


背中に叫んだが、返答なし。


仕方なくカミルの影から顔を覗かせると、前に1人の青年が立っていた。
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