好きだ好きだ、大好きだ。
バッティングセンターの恋
“カキィーン――……!! キーーン――……!!”
あ、あの人すごーい。
頬杖を付きながらその様子をボーっと眺めている私が居るのは、金属音が響く空間からガラス一枚隔てた所にある、小さな事務室の中。
さっきまで一緒にいた佐野さんは、オートテニスの機械の調整に行ってしまった。
「……」
野球の中継が流れるもうすぐ映らなくなってしまう、ちょっと画質の悪い古いテレビの更に上。
時計を見上げれば、その針はもうすぐ22時を指そうとしていた。
うーん……。
佐野さん、時間までに戻ってくるかな?
でも私がここにいたら、佐野さんに迷惑がかかっちゃうし。
法律で決められた高校生のバイトの時間は、22時まで。
少し悩んだ末、私は佐野さんが戻り次第帰れるように、机の上に広げていた宿題のノートをパタパタ閉じて、それらをカバンにしまい始めた。
< 1 / 232 >