THE FIRST STEP
「なんで?」
目の前の男、佐々木くんは怒った口調で訊いてくる。
「好きな人でもいるの?」
「別に、あの、そういうわけじゃないんだけど」
「じゃあいいじゃん。付き合ってよ」
佐々木くんが一歩こちらへ踏み出す。
比例するかのように私は一歩下がる。
「あの、私好きでもない人と付き合う気ない、です」
そう言うと、彼の眉間にしわがよる。
「言ってくれるじゃん」
そのまま後ろの黒板に体をおもいっきり叩きつけられた。
「痛っ」
「俺が男って分かってないでしょ?」
近づいてくる彼の唇。
やだ。
途端にパニックになる頭。
どうしよう身体が動かない。
その時勢いよくドアが開いた。