THE FIRST STEP
「名前で呼んで?」
私を甘やかすような声に頬が熱くなる。
「俺の名前、知ってるでしょ?」
「知ってるけど」
「ほら、呼んで?」
「絢斗」
「よくできました」
満足そうに微笑んで啄むようなキスをした。
「ここ、下駄箱。しかも学校だよ」
あたふたする私とは裏腹に彼はにこにこしていた。
「想いは形にしないと伝わらないって知ったからね」
「教室、行こうか」
そしてどちらからともなく手を繋いだ。
それは私たちのこれからのように、
溶け合っているかのように隙間なく絡めた。