THE FIRST STEP
私と佐々木くんは一斉にドアのほうを向いた。
「誰もいないからって教室でいちゃつくなよな」
少しからかうような声。
黒の短髪。相変わらずかばんにつけられたキャラクターのマスコット。
「藤田、お前こそ何してんだよ」
私はさっきと変わらず、彼と黒板の間にいる。
端から見ればただのカップルに見えるのだろう。
佐々木くんはまったく慌てていない。
「財布忘れたんだよ」
そう言って、なぜかこちらに向かってくる彼。
やだ、こっち来ないで。
彼に私がいまどんな顔をしているか、見られたくなかった。
私と佐々木くんの前で彼がとまる。
「で、何してんの?」
「は?」
「俺の彼女に何してんの?」
そう言い終わる前に彼に肩を抱き寄せられた。