THE FIRST STEP
彼の言葉を聞き、途端に焦りだす佐々木くん。
「藤田、誤解」
「じゃあさっさと帰れば」
佐々木くんに皆まで言わせず冷たくいい放つ声が、上から降ってくる。
彼は佐々木くんが逃げ出すように教室から飛び出ていくのを視界から消えるまで、ずっと睨み付けるように見ていた。
ドアが閉められたと同時に私は地面に座り込んでしまった。
「大丈夫、浅海?」
彼もしゃがみこんで、私の顔色を覗いてくる。
「うん大丈夫だよ」
びっくりしただけと言った割にはまだ震えている膝が憎い。
「怖かったな」
そう言ってあやすように頭を撫でてくれる。
一瞬昔を思い出して、泣きそうになった。
「なんか、ごめんね」
「別に俺はいいよ」
彼はあの頃と変わらぬ口調で微笑んでくれた。