バイバイまたね
「申し訳ありませんでした。」
あの男の子の母親だろうか?

その女性は、下げた頭をあげようとしなかった。

「頭をあげてください。」

お母さんの弱々しい声が、壁に吸い込まれて消える。

それでも彼女は、頭をあげようとしない。

そんな母親を、子供が心配そうに見ている。

「ママ?」

その一言が、彼女の逆鱗に触れたのだろうか?

パシッと乾いた音がした。

子供は、訳がわからず泣き出す。

「あれほど、道路に飛び出すなって言ったでしょ!どうして、道路へ出たの!!ボールくらい轢かれても構わないでしょ!あなたがもし轢かれたら…。」

そこで彼女は言葉を止めた。

自分の子が無事でよかったと心のどこかで思っていたのだろう。

母親は気まずそうな顔をした。
嫌な空気が流れる。
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