バイバイまたね
バキッと乾いた音がして、宏介が倒れた。

拳の痛みに、殴ったんだと実感する。

「ふざけるな。なぜ今ある命を大事に出来ない。なぜ生きたくても生きられなかった、優衣ちゃんの気持ちがわからない!!」
「生きられなかった?優衣は生きてる。なぜあってくれない?何で俺を避ける?」

そうだった。

こいつは、優衣ちゃんが死んだことすらわからないくらいに、おかしくなったんだ。

俺は、親友に嘘をついた。

12年で初めての嘘を。

「優衣ちゃんはさ、今体に異変が起きて遠くで病気を治してるんだ。宏介にいったら、絶対ついてくるから言わないでって言われたんだよ。なぁ舞子。」

舞子は、俺の作り話に首を縦に振ってくれた。

「優衣に会いたい。」

「会えるさ。必ず。だから生きるんだ。お前が死んだら、優衣ちゃん悲しむぞ。」

「そうだよ。優衣だって宏介くんに会いたいの我慢してるんだから、宏介くんも頑張ろう。」
そう語りかける舞子の声は、震えていた。

宏介は、泣き続けていた。

「ほんと泣き虫だな。」

気付くと、俺も泣いていた。
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