クリスマス恋語
「道場…?何か教えてるんですか?」
「昔はね。今はもう潰れちゃったけど。うち正面玄関がないから道場通るしかないのよ」
救急箱を持ってくるからと言って彼女は道場の奥に入って行った。
多分向こう側が居住スペースになってるんだろうな。
道場の真ん中に設置されていたストーブの前で僕は身体を温めることに専念した。
しかし彼女、一体何者なんだろう…。
あんな不良たちを瞬くまに一蹴しちゃったし。
そういえば不良たちが言ってたな。
彼女が〝鬼の嵐〟だとかなんとかって。
それにもっと不思議なのは、初対面も同然の僕を庇っただけでなく寝床まで提供してくれるという。
厳しい発言ばかりする彼女だけどやってることはお人よし以上だ。
僕なんかを泊めて彼女に何のメリットがあるのだろう…。