クリスマス恋語
夏の大会も終え、新学期も間近に迫った8月の終わり。
その日は蒸し暑い雨が朝から降っていた。
自主練をしようにもどの体育館も他の部活でいっぱいで、仕方なく雨の中、校舎の外周を僕はひたすら走っていた。
今日はさすがに夏南も来ないか…。
3周くらい走り一休みをしようと校庭にある水呑場へ向かおうとした時、彼女の声が僕を引き止めた。
「桂樹!?どうしたの!?全身泥だらけじゃない!?まさかこの雨の中、走ってたの!?」
驚きの声を上げながら夏南は僕を傘の中へ招き入れた。
「ホントだ。自分でも気がつかなかったよ。こんな泥だらけになってるなんて」
「もう…!こんな雨の日に外で走って…。転んでケガしたらどうするつもりだったのよ」
呆れた顔で夏南はハンカチを取り出し僕の顔についていた泥を拭き取ってくれた。
ただでさえ小さい傘の中。
そんなに近づかれると心臓が持たないんだけど…。