その仮面、剥がさせていただきます!
顔を洗ってキッチンに行くとリクが料理を運んでいるところだった。

あたしの顔を見てニコリと笑う。

「よく眠れた?」

「う……ん」

寝たような寝ていないような……

でもすぐにテーブルに並べられた朝ごはんに目が移った。

「リツは座ってて。すぐ出来るから」

忙しそうに動いているリクを手伝おうかと思ったけど、かえって邪魔になりそうな気がして言われたように大人しく椅子に座る。

お椀のお味噌汁からでる湯気やいい感じに焼けている脂ののったサケ。ほうれん草のお浸しに出汁巻き卵……

ん~これぞ日本の朝って感じ。

ホカホカのご飯が登場したところで、リクも椅子に座った。

「いっただっきま~す」

お料理上手のお隣さんでホントに幸せ……

彼女から友達、はたまたお隣さんに降格だけど、リクの手料理が食べれることって今までの人生の中で一番幸せかも。

一口一口を存分に味わいながら食す。

「リツ。すごく美味しそうに食べてくれるから作り甲斐があるよ」

「だってホントに美味しいんだもん」

「あ。だったら……」

リクが言いかけた時、リビングのソファから起き上がる人影が見えた。

「ふぁ~よく寝た」

両腕を上げ伸びをした男は寝ぼけた顔でこっちを向いた。

「なんでここにいるのよ」

「あ?お前こそ自分ちみたいに朝ごはん食ってんじゃねえよ」

「昨日の今日でよくもまあ」

大あくびをした春樹を睨みつける。

「昨日のこと……?」

えっとなんだっけかな。と首をコキコキ鳴らしているあの男、そろそろぶん殴ってもいいよね?

「リク。なんであいつがここにいるの?」

勝手に入ってきた……とは思えない。だとしたら、リクが招き入れたんだろうけど……

「ごめんね。リツが嫌がるかとは思ったんだけど……」

思ったんだけど?

自分を訪ねてきた春樹を無下にもできず?

っていうか、来てくれて嬉しかったとか?

疑いの目でリクと春樹を交互に見る。

「あっ。思い出した。陸人に殴られたこと言ってんのか?」

それもあるけど違うだろっ!

いや。思い出さなくてもいいから。

「大丈夫だ。オレと陸人はそんなことじゃ気まずくなったりしなから」

「そんなことって……」

「それともあれか。お前にキスしたことを言ってんのか?」

「そそそそんなこと思い出さないでよ!たかがあんな小鳥キス!」

リクとはもっとすごいキスしたんだからっ。

夢の中だけど……

「小鳥キスって……オレが本気になればもんのすごいぞ。なんなら試にしてみるか?」

ニヤリと笑った春樹にムッとする。

「誰があんたと……」

「そうだよね。ものすごいキスは俺としたからいいよね」

食べ終えた食器を乱雑に重ねてシンクに持っていったリクの後ろ姿を唖然とした顔で追いかける。

え……?

リク。今、なんて言った?


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