その仮面、剥がさせていただきます!
だってあれは夢で……

でも夢じゃなかったら?

そうじゃなかったら、あたしの途切れた記憶ってどういうこと?

「陸人とって……まさか」

さっきまでリクが座っていた椅子に春樹が座ると、あたしの顔をまじまじと見ている。

「なによ」

「陸人のこと襲ったのか?」

なんでそうなる!

実際襲おうかと頭によぎったけどそれは人としてしちゃいけないって思い留めたわよ。

「違う。俺がリツのこと襲ったの!」

リクには珍しく苛々した声をだし、大きな音を立てて食器を洗っていた。

もしかして怒ってる?

それは春樹に嫉妬して?それともあたしに嫉妬して?

どっちなんだろう……

「へ~陸人がねえ」

春樹も驚いたようにリクの背中を見ていた。

「リク……ごめんね」

怒っているのはあたしのせいだと思って気分が沈む。

春樹があたしにキスしたことが許せなかったんだよね。

だからあたしにあんなこと……

食器を洗い終わったリクが取って付けたようなスマイルで振り返る。

「別に謝ることリツはしてないよ」

「そうかな……でも」

「あ。でも、途中で寝ちゃったのにはびっくりしたけど」

ひえ~

やっぱ寝てたのね。

リクの言い方が少し怖くてビビっていると、春樹がまたニヤニヤしながらこっちを見ていた。

「お前。サイテーだな」

ほっといてよ!!

「ヤッてる途中で寝られたら男はかなりへこむよな」

春樹は小さな声で面白そうにそう言う。

ううっ。

「リク……やっぱりごめん」

たとえ春樹のことを忘れさせようとあんなキスをあたしにしたとしても、あたしはリクのことが好きだから嬉しかったよ。

リクがあたしのことを何とも思ってなかったとしても……

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