その仮面、剥がさせていただきます!
はあ……

こんな気分じゃ美味しい料理も味がしなくなるんだね。

食べ終わった食器をこれでもかってほど慎重に洗う。

怒ったリクの顔が頭から離れなくて、はあ……とまたため息を付いた。

リクはさっき洗濯機のブザーに呼ばれて洗濯物を干しに行ってしまった。

まだ怒ってるのかな……

タオルで手を拭いていると春樹の視線を感じて振り返る。

今度はなんなのよ!

机の上で頬杖をついている春樹を細い目で威嚇した。

「お前陸人のこと全然わかってないのな」

「どういう意味よ」

「からかわれたんだよ」

昨日のキスのことを言っているのだと思って「そんなことわかってるよ」と言い返した。

「そうじゃなくて、さっきのアレだ」

「は?」

「なんなら賭けてもいいぞ。陸人がここに戻ってきた時にはもういつもの陸人だとオレは思う」

「そんなにすぐ機嫌が直るわけないじゃない」

「おっし。何賭ける?オレが勝ったらお前は隣にソッコー帰れ」

「それじゃ、あたしが勝ったらあんたがソッコー家に帰ってよ」

よし。と二人はリクが出ていったドアを凝視していた。

「なあ。お前陸人の理想の女を聞きたがってたよな?」

ふいに春樹はそんなことを言う。

「どうせ、教えてくれないんでしょ?」

「いや。どうしてもって言うんだったら教えてやらないわけじゃない」

「それじゃ、ど~しても聞きたいから教えて?」

「軽いノリに聞こえないでもないが。まあいい。あのな、陸人の理想の女は、陸人より何でも出来るスーパー女子だ」

「…………」

それってあたしじゃ絶対ムリじゃん!

「今、諦めようって思ったか?」

「いいえ?そんなの楽勝~」

「まあな。お前じゃないってことだけは確かだ」

くくくっと笑う春樹を意識しながらも視線はドアに集中させていた。

ムッキーっ。

あの男、いつかぶん殴ってやる!



そしてお待ちかねのドアが開く……

自分に注目している二人の顔を不思議そうに見ているリク。

「二人ともどうしたの?」

見たところいつものリクだけど……うんにゃ、まだわからない。

「陸人。こいつに何か言うことある?」

親指を向けてあたしを指した春樹からあたしにリクの視線が移った。

「リツに?」

「う、うん……」

固唾を呑んでリクの様子を窺っていると、リクはニコリと微笑んだ。


「怒ったの少しは驚いた?」


だーーーっっつ。完敗デス。


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