その仮面、剥がさせていただきます!
玄関を開けると紙袋やらナイロン袋やらを下げた澤田先生が学園で見るのとは違うカジュアルな服装で立っている。

「よう!でこっぱち」

あたしの全開おでこをはたく。

はたかれたおでこを押さえ、上げていた前髪のゴムを外した。

「センセーどうしたんですか?」

追い返す訳にもいかず一応ここまで来てもらったのはいいけど、何しに来た?

「ん?家庭訪問だ」

「担任でもないのに?っていうか、春休みに家庭訪問って……あたしが学年で一位になるぐらいないですよね?」

「思い出した。上原、英語のテスト危ないところだったぞ」

誰も招き入れていないのに、お邪魔しますと先生は靴を脱ぐと勝手に中に入って行く。

そんなこと思い出さなくていいよ!

赤点ギリギリで春休みの補習をやっとのところで免れたっていうのに。

「それはそうと、こんな時期に家庭訪問って、あたし何かしましたか?」

そうでもなければわざわざ先生が訪ねてくるなんかあり得ない。

「その顔。心当たりがあるのか?」

両手に下げた買い物袋を机に置くと先生は「冷蔵庫に入れていいか?」と食材らしき物を冷蔵庫の中に入れる。

心当たり?

先生の机からバレンタインのチョコを何個か拝借したことを言ってるんだと思って顔が引きつった。

「上原~お前まさか……援交とかやってないだろうな?」

エンコー?

「はい。センセー質問!エンコーってどんな食べ物ですか?」

「センセーバナナはおやつに入るんですか?っていう小学生並みの質問だな。教師をからかうもんじゃないぞ」

「エンコーっておやつだったんだ」

どんな食べ物かとブツブツ言ってると、澤田先生は呆れた顔であたしを見ている。

「上原には縁遠い話しだったな」

「そ、そんなに高価なおやつなんですか!?」

「もういいわ!お前とは話しが噛み合わん」

「それってジェネレーションギャップって言うんですよ?」

先生はポカンとアホみたいに口を開けていた。

「……そんな言葉は知ってるんだな」

そんなことよりもだ。

「センセー。休みの日に一人暮らしの生徒の部屋に上がるってまずくないですかね?」

どうして来たのか知らないが、勉強のことを言われる前に帰ってもらわなければ。

「先生は上原がちゃんとご飯を食べてるのか気になってな。料理作れないんだろ?それに、雑用のお礼もまだだったしな」

あたしの頭に手を乗せると背の高い先生は顔を覗き込むように腰をかがめる。

そんな義理いらないよ。

ん。待てよ。

「先生。お願いがあるんですけど。あたしに料理教えてくれませんか?」

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