その仮面、剥がさせていただきます!
料理が出来るようになれば、スーパー女子に一歩近づくってもんだ。

片づけが出来ない時点で『まだ諦めてなかったのかよ!』とどこからかツッコミがはいりそうだけど、あたしはまだまだ挑戦するわよ。

「おういいぞ。本当は作ってやろうと思って食材を買ってきたんだが、一緒に作るか」



外はもう真っ暗で開けていたカーテンを引く。

朝ごはんはリクに作ってもらったけど、お昼ご飯は食べずに寝ていたからお腹がぺこぺこである。

先生はどんな料理を教えてくれるのかと、机に並べられていく材料を見ていた。

「まったく料理が出来ないなら……そうだな。三日は食べられるカレーとかはどうだ?」

「大好物です」

カレーと聞いていやしい口からヨダレが垂れ、じゅるると口を拭った。

まずはジャガイモの皮むきに挑戦!

包丁を握り鉛筆を削るように動かしていると横から先生の手が包丁を奪った。

「センセー危ないですよ?」

「上原の方が危ない……」

気を取り直して、次は人参の皮むきに挑戦!

今度は包丁じゃなくてT字のカミソリのような道具を渡される。

教わったように人参の表面に沿わせながら動かすと簡単に皮が剥けていった。

「おおっ」

この調子でサクッとカレーを作ってリクに食べてもらおう。

いっつもご馳走になってばかりじゃ悪いもんね。

調子付いてスピードアップすると、刃の部分が指先に当たった。

「痛っ」

「とうとう切ったか……」

先生は慌てることなく血の滲んだ指先にカットバンをはってくれた。

人参のように指先の皮を剥いてどうする!と自分を叱咤して次の作業へ取り掛かるが、慣れない包丁に何度指を切り落としそうになったことか……

その度にあたしの指にカットバンが増えていく。

「上原~先生が代わろうか?」

見兼ねた先生がそう申し出てくれるが、ここまで頑張ったんだから最後までやり遂げリクに「あたしが作ったんだよ」と言って食べてもらいたい。

なんとか指は五本揃っている間に切る作業が終わり、フライパンで材料を炒めるところまでこぎ着けた。

「玉ねぎを焦がさないように炒めろよ」

と、心配そうにあたしの後ろで見守る先生の指導で、煮込むところまで工程を終わらせると一気に疲れが出て椅子に座りこむ。

「カレー作りは上原にとって格闘技みたいなもんだな」

そうからかわれたって疲れがピークに達して何も反論できずにいた。

「美味しくできるかな」

どうせだったらリクに「おいしい!」って言ってもらいたい。

「あんなに一生懸命作ったんだから大丈夫だぞ?教えたのは先生だしな」

「もうすぐ食べられる?」

「まだまだだな。カレーを食べるのは明日だ」

「えぇぇぇ!!」

カレーは次の日に食べた方が美味しいと豪語する先生に猛烈に不満そうな顔をした。


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