その仮面、剥がさせていただきます!
部屋の片づけまで手伝ってくれた先生を玄関まで見送る。

「センセー。なんかスミマセンでした……」

「いいってことよ。しかし、お前たちってなんかお似合いだな」

「あ、あたしとリクですかっ?」

不釣り合いだとは思っても、似合っているとはとても思えないのですが?

「海道でも彼女のお前の前ではあんな顔するんだなって思ってな」

「あんな顔……?」

「『俺の女に手を出すな!』みたいな?」

先生はあたしのことリクの彼女だって思ってるからそんなこと言っているんだろうけど……

あたしがブッと吹き出すと先生は優しく笑ってあたしの頭に手を置いた。

「腹だして寝るなよ」

「子ども扱いですね」

扱いどころかあたしはまだまだ子供だって自分でも分かってる。

だから先生にもリクにも心配させちゃうのかな……

「センセー。今日はありがとうございました」

玄関を出て行こうとしている澤田先生に深々と頭を下げる。

「こっちこそご馳走様。上原は子供じゃなかったのも分かったし……」

ニッと子供みたいに笑った先生の右手が何かを掴む仕草で、あたしは自分の胸を防御してキッと睨む。

先生はまた海道に睨まれる……と肩を竦ませた後、何かを思い出したように「あ……」と足を止めた。

「そう言や、あの心理テストの診断なんだったんだ?」

心理テスト?

あ……

身長が四センチ低くなったらっていうアレのことでしょうか?

「あ……あれは。その……最大のピンチに陥った時にどう自分が対処するかってことらしいですよ?」

「……そうか」

「先生はピンチになった時って泣くんですね」

勝手に作ったでたらめな診断だけど、先生をからかうのには丁度いい。

「笑ってるけどな、男だって泣くときはある。上原ももう少し大人になったら分かるかもな」

意味ありげなことを言い、片手を上げながらにしゃりとまた子供みたいに笑う先生がドアが閉まると見えなくなった。

あたしは玄関の鍵を閉め、廊下を歩きだしたけど、その足がまた玄関に向かう。

靴を乱暴に履き、さっき先生が消えたドアを開けるとエレベーターに向かって歩いている先生を追いかけた。

「どうした?」

短距離競走のようにダッシュしたあたしは肩で息をする呼吸を整えていると先生は何も言わずに待っていてくれる。

「あ……ハァ……あの。先生にどうしても……聞きたいことがあって……ハァ……」

「なんだ?」

「あの……男の人って、好きでもない人とキスとか……できたりするんですか?」

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