その仮面、剥がさせていただきます!
――――君がしたいならいいよ……


奈緒子がリクに迫った時にリクが言った言葉。


あの時のリクの気持ちは今のあたしと同じ気持ちだったんじゃないのかな?

それを奈緒子が勘違いしただけ。

リクはちゃんと彼女たちを好きだった―――


「リツ?どうしたの?」

あたしが泣いているのに気付いたリクと目が合う。

「あたし……」

元カノたちに嫉妬しても仕方ない。でも、頭の中は他の女の子と一緒にいるリクの姿を想像してしまう。

今はあたしだけを想ってくれていると思うのに、リクのことが心から信じられないでいる。

指先で頬に流れた涙を拭ってくれてるリク。

この人が好きだって頭ではそう思うのに、心が拒絶する……


「ちょっと焦り過ぎたね。もう何もしないから、安心して眠って」


後ろを向いたリクの背中を暫く見てから、あたしも壁際の抱き枕に抱きついて目を閉じた。

リクも眠れないのが気配で分かるけれど、お互いに話しかけることはなかった。



ベッドを抜け出して、キッチンで買ってきた惣菜をお皿に移していると、リクも部屋から出てきた。

「今ご飯炊いてるからちょっと待っててね」

「……うん」

そして気まずい沈黙が続く。

チラリと後ろにいるリクを見ると、イスに腰掛け両手で頬杖をつき、どこか遠くを見ている。

眠くてボーっとしてるんだと思ってお皿に入れたサラダをリクの前に置いた。

「ご飯はもう少しかかるけど、これ食べてる?」

「あ……うんいいよ。リツと一緒に食べる」

「そう……」

焦点の合ってない目をして、こっちを見ようともせずに言うリク。

眠いだけじゃないんだ。リク、あたしに怒ってる。

それとも、嫌われちゃったかな……

さっきはどうして拒絶したのかを話せばもっと嫌われる。

リクの言葉が信じられず、それでいて元カノに嫉妬した。

あたし自身、リクのことが好きなのかさえも分からなくなってくる。




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