その仮面、剥がさせていただきます!
どうしてだろ?

リクと一緒にいるとあんなにドキドキしたのに。楽しかったのに……

大切だって言われた瞬間にそれが不安に変わった。


本当だったらここって飛び上って喜ぶところだよね?

なのに、なんでだろ?

あたしは素直に喜べない……


コロッケが入ったパックを開けお皿に移していた時、後ろからふわりと抱きしめられた。

箸に挟んでいたコロッケが滑り落ちるとお皿の端ギリギリに乗っかる。

「び、びっくりした」

箸を置いて首元にあるリクの腕に手を乗せると、腕に力が加わってギュッと強く抱きしめられた。

「嫌だって言っても離さないから」

「イヤなわけないよ」

背中にリクを感じてドキドキしているのに、駄々を捏ねる子供みたいにリクがそう言うから笑って答えた。

「リツはどう思ってるか聞かせて……」

頬と頬がくっつきそうなほど近くにいるリクの声は囁くように小さかったけどはっきりと聞こえる。

どう思っているかって……

自分でもよく分からないのに、それを声に出して説明するのは難しい。

でも、確かなことは

「あたしだってリクのこと大切だって思ってる。でも、不安なんだ」

「不安にさせてるんだ……」

「あたしが勝手に不安になってるだけだよ?」

「ううん。俺……」

リクがそう言いかけた時、玄関に続くキッチンの扉が勢いよく開いた。

その音でリクとあたしは同時に離れる。


「も~知らね!あんな女!」

拓にぃが頭をガシガシかきながら入ってきた。

苛々している様子だけど、こっちは突然の乱入者に驚いたのと、見られた?というドキドキとで、心臓がヤバいぐらい動いている。

「た、拓にぃ……」

「おう。いたのか?」

リクとあたしを交互に見て、拓にぃは「お邪魔だったか」と二シャリと笑ったけど、図々しくソファにどかりと腰を下ろす。

「あのね。ここは無料の宿泊施設じゃないのよ!今日は帰って!」

仁王立ちで拓にぃを見下ろすと、面倒臭そうな顔をしてソファに寝転がった。





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