その仮面、剥がさせていただきます!
「た、拓にぃには関係ないでしょ」

「へ~告られたんだ」

何もかもを見透かしたような顔をしてニヤニヤと笑う拓にぃに負けたあたしは、その場に座ると首にかけていたタオルを外した。

「告られたってわけじゃないけど……」

リクがあたしのことを好きだとは言わなかった……

それがあたしが不安になっている要因なのかな?

「けど、抱きつかれたんだろ?しかも後ろからって、女子がきゅんとする代名詞じゃね?」

やっぱり見られてた……

あたしはどういう顔をしたらいいのか分からず、照れ隠しに手に持ったタオルを手首に巻きつけたりして落ち着かない。

「それにしても……」

拓にぃは見慣れているはずのあたしの顔をじろじろと眺めている。

「な、なによ」

「あんまし嬉しそうじゃないのな」

「だから、告白されたわけじゃないもん」

無意味に巻き付けられたタオルで手首が痛い。

それを少し緩めていると拓にぃが寝転んでいたソファから起き上がった。

「律子は陸人のことどう思ってんだ?」

「どうって……好きだって前に言ったよ」

あの時はつい勢いで言ってしまったけど、好きだって気持ちは変わっていない……と思う。

だったら、どうしてあたしは不安になるのだろう。

「あのな。人の気持ちってすぐに変わるもんなの。そんなこともわかんね?陸人のこと好きだって大切だって思うんなら、今すぐ気持ちを伝えてこい。恋ってタイミングが重要なんだぞ。そのタイミングを間違えれば、一生二人の気持ちが交わることがないこともあるんだ」

「一生って大袈裟な……」

「呑気な事言ってっと、陸人の気持ちはすぐに冷めるかもな」

「そ、そうなの?」

それは大変だ。

でも、このモヤモヤな心の中をどうやって伝えればいいのか分からない。

そんなあたしの気持ちを感じ取ったのか、拓にぃがこう切り出した。

「何が引っかかってる?」

「何だろ?しいて言えば拓にぃが真面目に話してるとこ?」

「お前な。そこ茶化すところじゃない。陸人と付き合うのは嫌なのか?」

あ。そっか。お互い好きだとなると付き合うってことになるのか。

付き合う……

「そうかも。付き合うってところが引っ掻かっているのかも」

彼氏彼女になればリクはまた『付き合っているから』ってマニュアル行動をする。

そしてあたしはリクのすることや言うことに疑問を感じだす。

それがあたしの中にある不安の元なのかな?






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