その仮面、剥がさせていただきます!
夜になると拓にぃが仕事から帰った頃にあたしんちにリクが夕ご飯のお誘いに来てくれた。


「拓実さんも良かったら」

という言葉に拓にぃはどっぷりと甘え、三人での夕食。

春樹は昼間に帰ったみたいで一安心。


「なあ。俺のだけ皿が違うのはなんでだ?」

あたしとリクの前にある今日届いたばかりの食器に盛り付けられた料理を見ながら拓にぃはポツリと言った。

意外に細かい所に目が行く。

「愛よ。愛」

あたしはリクに聞こえないように小声で囁くと拓にぃは納得したみたいに頷いた。

どうやら拓にぃはあたしがリクに告白をして上手くいったのだと勘違いしたみたいだけど、それはそれでまあいいか。

お気楽に考えて、リクが作った料理を口に頬張る。

リク。今日の料理もサイコ―だよ!

って感じでリクを見ると、リクは拓にぃを見ていた。

「拓実さんは今日もリツのところに泊まるんですよね?拓実さんがいる間は俺のところにいさせてもいいですか?」

「おう。悪いな」

な、ちょ、ちょっと待って!

「お許しも出たことだし、食べ終わったら着替えを持っておいでよ」

「なんなら律子の部屋の物丸ごと持ってくるか?」

仕方がないけど手伝ってやるぞ。と相変わらず勝手なことを言っている。

「拓にぃがいる間って……」

そんなのリクが困るんじゃない?

せっかく今日新しいベッドが届いたのに、リクはこれから何日もリビングで寝ることになるんじゃない?

「陸人がいいって言ってんだから遠慮するな?」

あんたはもう少し遠慮しろよ!

「だって……」

「何にも心配いらないよ」

躊躇しているあたしにリクは微笑みかける。

この顔にあたしは弱い。


リクの優しさに付け込んでいる気がしないでもないけど、夕食の後片付けを手伝ってから、一旦自分の部屋に帰り着替えと抱き枕を抱えてまたリクの部屋に入る。


当然リクはあたしにベッドで寝るようにと言い、お風呂に入って行った。


抱き枕を抱えながら、昼間にリクと取り合ったセミダブルのベッドを前にして申し訳なさでいっぱいになる。

主より先に使ってもいいのだろうか……

布団の上にリクが買った抱き枕が置いてあるのに気付くと、自分が抱えていた抱き枕を見てため息を付いた。

そう言えばこの抱き枕、あたしのだってリクが言ってた。

それなのに、わざわざ自分ちから持ってきてしまうあたしって……


何やってんだろ?

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