その仮面、剥がさせていただきます!
ここではあたしは居候の身。

と、いうことで、抱き枕を抱えたままで入ったばかりのリクの部屋を出てリビングに移動するとソファに寝転んだ。

お風呂から出てきた時にここであたしが寝てれば、リクは仕方なく自分の部屋のベッドで寝るだろう。

すぐに眠りにつけるはずもなく、ソファに転がってから数分。

お風呂から上がったリクがリビングに入ってきた気配で、目をギュッと閉じる。


あたしは寝てる。

もうここで寝ちゃってるから、リクは早く自分の部屋に入ってね。


枕を抱きしめている手にも力が入る。


リクの足音があたしが寝ているソファ近くで止まり、また動き出す。

その足音はあたしのすぐ傍で止まった。

「リツ?」

起きているのかどうか確かめているんだと思って、あたしは身動き一つしない。

静かすぎる部屋に立っているリクが屈んだ気配がした。

きっとすぐそこにリクがいる。

そう思うと緊張して唾をゴクリと飲み込む。


うううっ。

起きてるってバレないうちに早くあっちに行ってほしい……


そう願っていると、リクの立ち上がった気配がしてホッと胸を撫で下ろした。


その時……

あたしとソファの間に何かが侵入したかと思ったらフワリと身体が持ち上がる。


「わっ」

思わず声が出て目を見開くと、リクの視線とぶつかった。

しかも、至近距離で。

「あ。起こしちゃったね」

「え?あ、うん」

反射的に答えたけれど、あたしリクに持ち上げられてる?

自分の膝が見えその下にはリクの腕。背中にもリクの手が回っていてあたしの身体を支えている。

「こんなところで寝てたら風邪ひくよ」

そう言いながら、リクはあたしのことを抱えたまま歩き出した。

「やっ。下して!自分で歩けるしっ」

リクの胸の中から逃れようと足をバタつかせる。

それでもリクは平然と自分の部屋の方へ歩き器用にドアを開け、ベッドの上にあたしを下すとやっとそこで解放された。


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