その仮面、剥がさせていただきます!
朝起きるとすでに隣に眠っているはずのリクがいなかった。

昨夜は「こんな気持ちなんかで寝られるかっ!」って思ってたのに、前の日の睡眠不足の影響ですぐに爆睡……

はあ。あたしイビキとかかいてなかったよね?

あ。

そう言えば、リクが夢に出てきたような気がする。

あたしは忘れかけていた夢の内容を必死で思い出した。

「おおおっ」

そうだった。

夢の中のリクはあたしにこう言ったんだ。


『妹なんか思ってないよ。リツのこと……好きだよ』って。


きゃ~~~っ。

夢の中だったけど、うううっ。嬉しいよ。


布団の中で夢の余韻に浸るだけ浸ると、リクのいるキッチンを覗きに向かう。

キッチンでは甘い香りが漂っていた。


朝起きて好きな人が傍にいるっていいよね。

それが片思いだとしても。

フフフと気味悪い笑いを浮かべながらフライパンを握っているリクの傍に近づいた。

「今日の朝食はフレンチトーストだよ」

ふんわりとした甘い香りの正体をフライ返しで裏返すとリクが振り向く。

「美味しそう……」

あたしの目はフライパンの中にあるフレンチトーストにクギ付けで、すぐそこにいる『好きな人』には見向きもしない。

まあ。あたしって所詮、花より団子なのよね。

フレンチトーストに気を取られていると、フッと笑ったリクが不意にあたしの髪を触った。

「寝癖ついてる」

「え?ホントに?あ、あたし直してくるね」

あたしはその場から逃げるように洗面所に駆け込んだ。


考えてみれば顔すら洗っていない……

思い切り跳ねてる髪を鏡で確認してから自己嫌悪。


リク呆れてるだろうな……

こんなあたしじゃダメだって分かってるのに、なかなか自分を変えられない。

だから、友達から妹にまたまた格下げなのかもしれないな。

友達ならまだチャンスがあったのに、妹となるともう女の子としてもみられないんじゃない?


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