その仮面、剥がさせていただきます!
「お弁当だけでいいの?」

「そうだよね。お茶も必要かも……」

ペットボトルを三本取り出してカゴに入れる。

これで良し。

意気揚々とまたレジに向かっているとふと気づく。

あれ?

あたし一人だよね?

きょろきょろと辺りを見回していると、後ろから声がした。

「友達と一緒に食べるの?」

振り返ると、このコンビニで会った男が立っている。

「また会ったよね」

ニコリとあたしに笑いかけると、傍に近づいてきた。

あたしは思わず後ずさりをすると、爽やか青年は白い歯を見せてニコリと微笑んだ。

「あの……」

この人あたしを見てるよね?

あたしに話しかけてるよね?

「こうして偶然会うの、三度目だよね」

そりゃ、近くに住んでりゃここで会うなんてこと珍しくないと思うけど……

返答に困って何度か瞬きを繰り返すあたし。

「今度会ったら運命だって僕が言ったこと覚えてる?」

そういやそんなこと言ってたような。

ぎこちなくコクリと頷くと、青年はまた微笑んだ。

「浩太って言うんだ。君の名前は?」

「え?な、名前……」

どうして見ず知らずのこの人に自己紹介をするのだろう?


―――あれがナンパだって気づかないお前って……


春樹がそんなことを言ってたような?

え?

これってナンパなの??

あたし。今ナンパされてるの?


「もしかして僕のこと警戒してる?」

腰を少し屈めた浩太という青年は窺うようにあたしに自分の顔を近づけた。

「そ、そんな。ナンパだなんてことないない……あり得ない」

首を左右に振ると浩太はクスッと笑った。

「やっぱりいいな。君のこともっと知りたいって思ったよ」

「それって……」

やっぱりナンパ?

こんな経験が今まで全くなかったあたしはどう対処してらいいのか分からない。


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