その仮面、剥がさせていただきます!
「ええっと……」

困り果てて目を泳がせていると、持っていた買い物かごの存在に気付き「急いでるから」と浩太に背を向けた。

はあ……

ビックリした。

お弁当を買って早く帰ろ。

リクの髪がどうなっているのか心配でたまらないあたしはコンビニを出ると小走りでマンションへと急ぐ。

「ちょっと待って」

後ろからいきなり浩太に腕を掴まれ呼び止められると、あたしは迷惑極まりない顔で振り返った。

「急いで帰らなきゃいけないの」

まったく、いったいあたしに何の用があるっていうのよ!

リクの元へ帰ることを邪魔されたあたしは不服そうな顔を浩太に向ける。

「まいったな……」

浩太は後ろ頭に手をやって困ったように苦笑いを浮かべた。

「あたし。本当に急いでるから」

掴まれていた浩太の手を捻るように解きまた背を向ける。

「三分だけでいいから話しを聞いて」

そう呼び止められたけれど、あたしは聞こえてないふりをしてスタスタと歩き出した。

こんなところで知らない人の話しを聞いてる場合じゃじゃないのよ!

無視したことで諦めたのかそれ以上浩太に呼び止められることはなくマンション近くまで帰ることが出来た。


はぁ……

お弁当を買いに行くだけで疲労困憊……

ぐったりしてマンションの門をくぐると、ドアの前に男の人が立っていた。

ロック式だから暗証番号を入力しないとドアは開かない。

そのことを知らないのだろうと思いながら近づくと、振り返った男の人と目が合うと同時に「あっ」と声が重なった。

「君。陸人の……」

「リクのお兄さん……」

会釈をして挨拶を交わすと「リク部屋にいますよ」とロックを解除した。

「いや……君に会えて良かった。実は」

そう言いかけると道側に視線が移る。

つられて同じ方を見ると、さっき自分を呼び止めた浩太がこっちを見ていた。

「友達?」

きっとリクの友達だと思ったのか、そう聞いてくるからあたしは首を横に振った。

どうしてあたしの後を付いてきたのか理解不能……

もしかしてストーカー?

ないない。

あたしが思うにストーカーとは好きな人を必要以上に追いかける行為。

この世の中にあたしをストーキングする男がいるはずない。

「そこのコンビニで話しかけられて……その……」

何が何だか分からないけど、リクのお兄さんに一応説明してみようと試みるけれど、上手く説明できない。

あ。もしかして……

自分の後を追ってきた浩太の心情を自分なりに考えてみて一つの答えにたどり着く。

もしそうだったらストーカーだなんて勘違いしたあたしは極めてアホだ。

リクのお兄さんの前だけど、浩太に確かめるしかない。


「あなたはここの住人……ですか?」


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