その仮面、剥がさせていただきます!
そうだったらそれはそれでしょーがない。

でももし違っていたなら……

ん?

それはそれで、別にいいのか?

さっき無視した自分が浩太に問いかけたことすら恥ずかしくなる。

「僕の家は……違うよ。君が話しを聞いてくれないから」

「話って言われても」

そうか。このマンションの住人じゃないんだ。

何故かホッとする自分がいる。

浩太がリクのお兄さんをチラリと見る。

「この前の彼氏じゃないいんだ」

「この人は……」

と、言いかけると隣にいたリクのお兄さんがあたしの手を掴んだ。

「俺の女に何の用だ?」

静かだけど低音の怒りに満ちた声。

その言葉の意味より、綺麗な顔をしたリクのお兄さんの凄んだ表情にゾクリと背筋が凍る。

それは隣にいたあたしより向けられた本人の方が効果覿面だったらしく、強張った顔をしてその場を去って行った。

浩太の姿が見えなくなると優しい顔になったリクのお兄さん。

「気を付けなきゃいけないね」

「はい……」

何を気を付けるのかはよく分からないけど、さっきのやり取りの余韻で心臓がバクバク鳴っていた。

「陸人に怒られるな」

そう言いながら握っていた手を離される。

あたしったら、ビビって握られていたことすら忘れていたよ……

「あ、ありがとうございました」

ぎこちなくお礼を言うと、アイドル以上の爽やかな笑顔にドキリとする。

「一つ貸ができた。ってことで、ちょっと付き合ってくれる?」

「え?あの……」

肩に手を回され強引にマンションの入り口から連れ出される。

またその動作が自然で知らず知らずのうちにリクのお兄さんのペースに嵌っていた。

気が付くとファミレスでジュースなんぞ注文している。

隣に置いたコンビニ袋に入ったお弁当に気を取られたけど、前に座っているリクのお兄さんを見ると一瞬にしてお弁当の存在すら忘れてしまいそうになった。

そういや。オーダーを取りに来たバイトのお姉さんの目がハートマークだったなとか、周りを見回すと女子からの熱い視線が容赦なく向けられているなとか、とにかく落ち着かない。

存在感もアイドル以上か?

「あたしに話しって……」

リクと一緒にいる時も居心地は良い方じゃないけど、その数倍も居心地が悪い。



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