その仮面、剥がさせていただきます!
なんだか居づらいな……

ストローで必要以上にオレンジジュースをかき混ぜているとリクのお兄さんがクスリと笑った。

「居心地悪そう?」

「あ。いえ……」

こんなあたしと一緒にいたら恥ずかしいんじゃないのかって思うと、なんだか恐縮してしまう。

「陸人とはまだ付き合ってるのかな?」

「え?」

「あ……こんなこと急に聞いたら悪いよね。陸人は女と長続きしないからつい確かめちゃって。そうだ、さっき陸人のところに行くとこだったんだもんな」

変な事聞いたな。と照れる表情もまた完璧だ。

って……

何観察してるんだあたしっ。


珈琲を一口飲んで一呼吸置くと、リクのお兄さんは苦渋の表情で話し始めた。

「こんなこと彼女の君に頼むのは心苦しいんだけど、実は母親の体調があまり良くなくて……」

「そうなんですか?」

知らなかった……

「陸人に言っても一度も帰って来なくてね……」

お兄さんの話しを聞きながらこれまでリクとあった出来事を思い返す。

買い物帰りにお兄さんと会ったあの日。リクはお兄さんとお母さんの話しをしたんだ。

あたし、その話し聞いてない……

何してたんだろ?

あ……

その場面を思い返すとサアーと血の気が引いていった。


あたし、女の人と一緒に居たって勘違いしてリクのこと責めた。

しかも、夜中にネットカフェに迎えにまで来させて……


「あの。あたしからリクに帰るように言ってみます」

必ず帰らせます!と必死の形相で身を乗り出す。

「実は……昨日入院したんだ」

あたしは入院先を教えてもらうと、急いでマンションに帰ってきた。

だって、リクが帰れないのはあたしの所為だって思ったから。

あたしが面倒をかけてる所為でリクがお母さんのところに行けないって思ったから。

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