その仮面、剥がさせていただきます!
「そっか。兄貴に会ったんだ」

明らかに動揺したリクはイスから立ち上がると、あたしから逃げるようにリビングのソファに座った。

「聞いたの。お母さんの身体の具合が悪いんだって……」

リクにそう言っても何も返ってこない。

「お母さん昨日入院したんだって、お兄さんからどこの病院か聞いたよ」

「…………」

「リク?」

ソファに座っているリクの後ろ姿からは何も察することが出来なくて、食べかけのチャーハンを置いてあたしもリビングに移動した。

ゆっくりとリクの前に回り込むと、リクは微動だにせずジッとテレビの方を見つめている。

拓にぃが付けっぱなしにしていたテレビからお昼の情報番組の軽快な音楽が流れていた。

「あのね」

テレビに夢中で聞こえなかったのかと思ってもう一度言おうと口を開くとあたしからは見えない角度に顔を背けた。

「聞きたくないんだ」

「リク……」

泣いているのかもしれないと錯覚するような声で言われると、それ以上話せなくなってしまう。

あたしはそっと音をたてないようにリクの隣に座った。


そう言えば、リクは家族のことになるといつも話しを逸らしていた。

ここに一人で暮らしている理由も何も言わない。


でも、このままじゃやっぱりいけないよね?

どんな状況なのか分からないけど、お母さんが入院してるわけだし。


「お見舞い。行った方がいいんじゃない?あたしも一緒に行こうか?」

「…………」

「そっか。あたしが一緒に行っても邪魔なだけだよね」

なるべく明るく話しかけるけど、リクは何も言わない。

暫くの間、重苦しい沈黙が続くとリクが急に立ち上がった。

「リク……」

「家族のことだから放っておいて」

そう言って部屋の中に入ってしまった。



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