その仮面、剥がさせていただきます!
ストーカー男の浩太と少し距離を置いて座る。そしてまた黙々と作業を続けた。
あたしになんか何もしないとは思うけど念の為。そう念には念をいれてっと。
「綴じ終わったファイルはあそこの棚に置いて」
机に置き場所がなくて困っていると浩太に言われて棚にファイルを置きに行く。
「その棚先生の手作りなんだって。だから少し揺れるから気を付けた方がいいよ」
それはどうも。
一応木で枠を作っているみたいだけど簡易な棚で倒れたファイルを立て直すと確かに揺れる。
センセー。ちゃんとした棚を作ってよ~
今度文句言ってやると頭の中で叱咤しながら机に戻ってくると、浩太が入れ替わりで立ち上がった。
「これから部活に行かなくちゃいけないんだけど、上原さんはまだいる?」
「そう……あたしは部活もないし、もう少ししてから帰るよ」
浩太が準備室から出ていって一気に脱力した。
これが明日から続くってどうなのよ。
こんな緊迫した放課後は一日でも短い方がいい。ってことで浩太が部活に行った後もひたすらプリントと格闘していた。
自分でも驚くほど集中していたと思う。何時かも気にしていなかったけどお腹の鳴る音でお昼はとっくに過ぎていたことを思い出した。
「お腹空いたな」
準備室で一人呟くと後ろのドアが開いた。
「あれ?上原一人か?」
「センセーが押し付けろって言ったんじゃないですか?」
「本当に押し付けられたのか……」
「そんな訳ないじゃないですか。ストーカー……いえ。椎名くんはさっき部活に行きましたよ」
ナイロン袋をガサガサ言わせながらさっきまで浩太が座っていた椅子に澤田先生は腰を下ろした。
「一人で頑張ってたご褒美だ。食べろ」
先生は袋の中から鮭とワカメのおむすびを取り出すとあたしの前に置いた。
「別にあたしだけが頑張ったわけじゃないけど。いただきます」
遠慮せず二つともぺろりと平らげると先生の前にある袋を見た。
「……お茶忘れてた。プリンも食……」
「いただきます」
「お前。食いっぷりいいな」