その仮面、剥がさせていただきます!
帰り道。歩きながら浩太の言った言葉の意味を考えていた。
今日のアレとはなんだろう……
アレってきっと後ろから抱きつかれた事だよね。
それを浩太に見られてた……
恥ずかし過ぎる。ってか、なんでリクはあんなことしたんだろう。
計算?
計算ってどういうことだろう。
そんなこと恋愛偏差値の低いあたしが分かるわけもなく何も意味が分からないままマンションの扉を開けた。
すぐに狭い玄関で靴を履く拓にぃと遭遇してしまう。
「またどっかいくの?」
「おう。これから海外ロケ。一週間近く向こうにいるから」
「そうなんだ」
拓にぃが居ようが居まいがあたしには関係ないけど。
「陸人には伝えてあるから隣で面倒みてもらえ」
そう言いながら拓にぃはあたしの顔を下から覗き込んだ。
「なに?」
「昨日倒れたって言ってたけど顔色はよさそうだな」
「何よ。今更」
拓にぃが立ち上がったから玄関の扉を持ったまま後ろへ下がる。
「オレより陸人が迎えに行った方が良かっただろ?仲直りもできたみたいだし」
仲直り……したのかな。
黒の大きなころころバッグを廊下に出しながら拓にぃはニヤリといやらしい笑いを向けてきた。
自称恋愛達人の拓にぃに謎の解析をお願いしようと思っていたけど今の笑いを見た瞬間、やめた。