その仮面、剥がさせていただきます!
「どうしてリツが謝るの?」

「だって……」

リクを抱きしめた両手に力が入る。

「リツだけなんだ。あんな風に本気で俺と向き合ってくれたのは。だけど俺が意地を張っちゃってリツを怒らせたから……」

「だから話してくれたの?」

そんな大事な話し……

「俺はリツに甘えたのかな。後で考えたらリツまで俺の前からいなくなるんじゃないかって焦った」

「あたしはいなくならないよ」


どんな形であってもリクがあたしのことを必要としてくれているうちは離れたりしない。

もう期待なんてしたりしないからリクの隣にいてもいいかな?


「良かった……」


安心したのかリクの背中の緊張が取れた気がした。


あたしだって良かったよ……


って、あれ?この体制。


考えてみたらあたしってばなんてことしてんだ。


今日リクがあたしにしたのとは正反対で。自分の腕はリクの胸の辺りにあってお風呂から上がったばかりのシャンプーの匂いが鼻を刺激する。


いい匂い……


ってそうじゃなくて!


あたし。リクのこと襲ってなんかいないからね。


「あのさ……」

「な、何?」


もうそろそろ離れた方がいいよね。リクは嫌がっているかもしれないし。


リクの背中にかかった自分の身体の重みを少し軽くしたとき、リクを抱きしめていた手を掴まれてまたもとの位置に戻されてしまった。


「もう少しこのままでもいいかな?」

「えっ?」


それって……


< 180 / 256 >

この作品をシェア

pagetop