その仮面、剥がさせていただきます!

拓にぃに言われると本当に簡単な事のように思えてきたから不思議だ。

「おまえは全然陸人のことが分かってないのな」

「拓にぃより分かってると思うけど」

一日のうち授業中以外はほとんどの時間をリクと一緒に過ごしている。

分からない筈がない。


「うんにゃ。分かってない。陸人はどうして好きな人に好きって言えないのか律子に分かるか?」

「それは……」

分からないけど。と口の中でもごもごと答えた。


「母親からの愛は偽物の愛だって思ってる陸人は愛し方が分からないんだよ。『好き』や『愛してる』って言葉は母親から言われたかもしれないけどさ。それは偽物だったってことだろ?言葉を信じなくなくなるのも当然だ」


「だからって、自分が言うのとは違うと思うんだけど」


他人から言われた言葉は信用できなくても、自分が言う言葉はリク本人の気持ちだからそれは偽物とは違う。


「人間てな。そんなに物わかりがいいわけじゃないんだぜ」


あたしにはそんな難しいことはよく分からないけど、拓にぃが言ったことが正しいのならリクは全然器用なんかじゃない。

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