その仮面、剥がさせていただきます!
椎名くんの言ったように全然大丈夫じゃないけど、それを関係ない人まで巻き込んで慰めてもらおうなんて思わない。
大きく深呼吸をしてまた出てこようとしている涙をひっこめた。
「あの……椎名くん?」
けが人を突き飛ばすわけにもいかず椎名くんの優しさも無下にはできない。
椎名くんに抱きしめられた状態で暫く途方に暮れていた。
「おい。何やってんだよ」
後ろの半開きになっていたドアが突然開いた。
この声は……
「あんたこそ、ここに何の用なのよ」
椎名くんから離れたあたしが鬱陶しそうにそう言うと春樹はこの上ない不機嫌な顔をした。
「来たくて来たわけじゃないけど。来てみりゃこれだ。ったく付き合いきれねぇ」
「は?椎名くんとは別に何でもないから!」
あの状況でこの発言はちょっと無理があるかなって思ったけど、実際何もないのだから問題はない。
「おま……よく言えるよな。こいつあの時に声かけられてたヤツだろ?下心見え見えなのが分からないとはホント笑える」
「あのね。誤解してるようだけど椎名くんとはただのクラスメイトなの。ったくホント何しに来たのよ」
ただ喧嘩を売りに来たとしか思えないんだけど?
春樹は「ああ……」と思い出したように呟くと蒸気している自分を押さえるように深呼吸をした。
「陸人とケンカしてるんだろ?あれはな……お前の誤解だから……さ」
急に大人しくなった春樹からの言葉が今度はあたしの逆鱗に触れた。
「誤解?」
「ああ。あれはなオレが陸人に頼んだことだから」
「何を頼んだのよ?」
はっきりと話しをしない春樹に沸々と怒りがこみ上げてくる。
「だから。オレにしつこく言い寄ってくる女を陸人に頼んで諦めてもらった……っていうわけで」