その仮面、剥がさせていただきます!
「何があったのか言いたくなかったら言わなくてもいいけどさ。あいつかなり凹んでるみたいだったから」


ったく。拓にぃ余計なことを……


「いいえ。あの。拓実さんにまで心配かけてすみません」

「オレは別にいいんだけどさ……陸人。ビール飲むか?」


未成年になんてことを。


リクは拓にぃに勧められたビールを当然ながらお断りして、それから暫く沈黙が続く。


ドアの向こうで何をしているのか気になるが覗いてみるわけにもいかず、息を殺して次の会話を待っていた。


「リツ何か言ってましたか?」

「いや……」

「そうですか」


重苦しい空気がこっちにまで伝わってくる。


「俺。何をやっても上手くいかないんですよね。今回のことだってリツを守ろうとしたのに結局はリツのことを悲しませる結果になってしまって」


リク……


「あいつはお前に『好き』って言葉を言ってほしいだけなんじゃないのか?」


「…………」


「母親のことが原因か?」


「拓実さん知ってたんですか。いや。いいんです。拓実さんにも話しておかなきゃって思ってましたから。

親子って難しいですね。俺の家は特別かもしれないけど……」


それからリクは母親への想いを話し始めた。


「自分の呼び方が『私』から『僕』になって『俺に』変わった時には完全に母親からの愛情は感じられなくなっていました。

小さいころは男も女もそんなに体つきは違わないけど、中学になれば背も急激に伸び始めて声変わりもする。

俺が男になっていくのが母親には耐えられなかったみたいで……」


「それで離れたのか?」


「はい。幼かった頃母親から言われた言葉も全部ウソだったって思ったら人を好きになるのが怖くて……

実際今まで付き合った彼女……と呼べるのかわからないけど。その子達は俺自身に惹かれたわけじゃない。

並べられた愛の言葉も何一つ真実じゃなかった」


「だから律子の言葉も信じられないのか?」


「リツは……」





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