その仮面、剥がさせていただきます!
ケータイばかり見ててもしょうがないと、リクがいるお店の中に入る。すると、リクが座ってる傍に男の人が立ち、リクと話しをしている姿が見えた。後姿しか見えないから、誰かもよく分からない。



制服じゃないから、学園の人じゃなさそうだけど。

今、あたしが行かない方がいい……よね。



そう思い、もう一度外に出ようと立ち止まり踵を返した時、リクがあたしを呼ぶ声が聞こえた。

ギクリと肩を硬直させ振り返る。


見付かっては仕方ない。

話しをしていた男の人も振り返り、こっちを見ているのが分かったけど、あたしは一切目を合わさず、軽くお辞儀だけしてリクの前に座った。


どういう知り合いだろ?きっとリクはこの人に嫌みを言われる。


『え?もしかしてカノジョとか言うんじゃないだろ?』


リクとあたし……

どう見たって釣り合わない。


早くどこかに行ってくれないかな。と思いながら、あたしは俯き小さくなっていた。


「邪魔しちゃたっかな。ごめんね」

きっとあたしに向かって言ったのだと思い、俯いたまま「いいえ……」と答える。

「陸人。たまには家に帰ってこいよ。ああ見えて、母さんも心配してるんだから」

「……分かってるよ」


少し突き放した言い方がリクらしくないと思い顔を上げると、男の人と目が合った。

「それじゃ。かわいい彼女さん。またね」


王子スマイルに負けない……いや。それ以上の爽やかな笑顔を向けられ、あたしの体は固まった。目は去っていくその男の人を追いかけている。

大学生だろうか、仲間の待つテーブルに帰ると、にこやかな表情で話の輪に加わった。数人いる女の人の視線は全て一人の男に注がれ、その顔は明らかに恍惚している。




「俺の兄貴……だよ」

リクの声がするまで、あたしはずっとあの男の人を見ていた……と思う。

「へ~お兄さんなんだ」

そうでしょうね。

だって、何となく似ている。一言で言えば、その雑誌から出てきたトップモデル。
あ。それに、さっきの会話からも分かったってのがあるけど。

「リツはああいうのタイプ?」

「ううん。あたし『ザ☆芸能人』って感じの人ちょっと苦手かも。あと、平気でお世辞が言える人とか、チョー苦手!」

「リツ……」

「あ。ゴメン。別にリクのお兄さんの悪口とかじゃなくって……」


両手を振ってバタバタと弁明をするが、時すでに遅し……

ああ……あたしってばなんてことを。


リクはというと、キョトンとした顔をしたかと思うと、くくくくっと声を押し殺して笑っていた。



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