その仮面、剥がさせていただきます!
「友達と別れるのは辛いでしょ?」

「まあ……それはそうだけど……」

「だからね、私考えたの。律子は日本にいて今の学校に通えばいいわ。この家は人に貸すことにしたから、春休みの間に引っ越しして……」

「ちょっと待って。あたしが日本に残るとしても、この家でこのまま暮らせばいいんじゃない?」

あたしの反論にお母ちゃんはため息をついた。

「あのね。年頃の女の子一人を一軒家に住ませられないわよ。よく考えてみて。律子はちゃんと戸締り出来る?全部の部屋のお掃除出来る?」

「……できない」

「そうよね?日本に帰ってきた時に我が家がごみ屋敷なんて嫌よ。その点、マンションなら、散らかっても片付けるのは少しで済むし、鍵をかけるのは玄関だけでしょ?その方が私も安心だし」

それはそうかもしれないけど……

確かにあたしは自分の部屋もろくに掃除できない。自分の身の回りのことすら出来ないのに、一人暮らしなんかできるのかな。

考えれば考えるほど不安になる。

それに、最大の難題もある……

「大丈夫よ。今までは私がいたから律子も甘えて何もしてこなかったけど、そういかなくなれば、なんだって自分でするようになるわよ」

ニコリと笑ったお母ちゃんをあたしは恨めしそうに見た。

そういう魂胆ですか?

まあ。お母ちゃんの言うことにも一理ある。今まで何もしなかったのはあたし自身だし、甘えていたのも事実だから。

「けどね。娘一人置いていって何かあったらって考えない?」

心配でしょ?可愛い一人娘を放っておけないでしょ?

あたしは縋るようにお母ちゃんに訴えた。

「そうね。一つだけ心配なのは……」

「うん。うん」

「『子供ができちゃった』って言わないでね☆」

そんなこと、言わねえよ!!

そうじゃなくて、もっと大事なことがあるじゃない?ほら。生活する上で最も大切なことが!

「あ!もう一つあったわ」

「なになに?」

今度こそはと期待してお母ちゃんの言葉を待った。

「光熱費はなるべく節約してよね☆」

あ~もうそうじゃなくて……

「お母ちゃん。あたしやっぱ一人暮らしなんかムリ!!だって、一切料理できないもん!!」

食べなくてどうやって生活しろと?

あたしに飢え死にしろと?

「そんなことどうにでもなるわよ。やってみれば簡単だし、いざとなればできるものよ。でもね。毎日、コンビニ弁当とかはダメよ。栄養が偏っちゃうから」

そんな呑気なことを……

お母ちゃんの決意は固いようで。こうなったらあたしが何を言ってもムダだって分かってる。

「早速だけど、明日には引っ越し先を決めちゃいたいから、私が勝手に選んでもいいかしら」

「…………」

どうぞご勝手に……

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