その仮面、剥がさせていただきます!
高校2年生最後の授業が終わる。明日は終業式。

そして、春休みに入る……

引っ越しやらなんやらで、あたしの春休みは忙しいんだろうな。

まあ。その方が余計なことを考えなくていいのかも。


HRが始まる前に澤田先生に命じられたノート配りをやり終え、担任の長い話が終わると、教室から生徒が出ていくのを見送ってからあたしも教室を後にした。

廊下を歩いていると、人使いの荒い澤田先生が向こう側から歩いてきている。また何か命じられないようにと咄嗟に鞄で顔を隠した。

「おう。上原。ご苦労だったな」

あたしの行動は逆に目立ったようだ……失敗。

「先生さようなら」

「上原には三学期に色々と世話になったからな。どうせこれから暇だろ?」

何事も無かったようにしらっと通り過ぎようとしたけど、やっぱり簡単にはいかないみたいだ。

『どうせ暇だろ?』
失礼極まりない言い方にあたしの眉がぴくんと上がる。

「忙しいので、失礼します」

また何か用事を押し付けられるに決まっている。

「それは残念。これまでのお礼に何か奢ってやろうかと思ったのにな」

「ホント残念です~お礼にと仰るのでしたら、今後一切あたしに雑用を頼まないで頂けると助かります~」

作り笑顔を向け、嫌味たっぷりにそう言うと、苦笑いしている澤田先生に「失礼します」と会釈した。

放課後まで澤田先生の顔を見たくないってーの!

廊下の角を曲がるとホッと一息漏らす。追いかけてまでは来ないみたいで一安心。


すると、誰もいない廊下に澤田先生の声が響いた。



「今日な。海道、ちゃんとスリッパ履いてたぞ!」



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