その仮面、剥がさせていただきます!
「陸人と別れるって言いなさいよ!」

「そんなことあんたに指図なんかされない!」

「言わないとこんなものじゃ済まされないわよ!!」

「望むところよ!」

お互い立ち上がると、また同時に相手に向かっていく。


「なにをやってる!」

駆けつけた先生二人が、あたしと女を後ろから掴むと、引き離した。あたしも向こうの女も興奮状態で息が上がっている。

それでも女はまだ何か叫びながら、先生に引きずられるようにして仲間たちと一緒に体育館から出て行った。

「上原……」

頭の上から澤田先生の声がした。


あたしをあの女から引きはがしたのは澤田先生だったようで、そのまま生徒指導室に連れて行かれた。

湯気の立つコーヒーの入ったマグカップをあたしの前に置き、自分の分のコーヒーを飲みながらあたしの前に座った。

「お前の用事って喧嘩をすることだったか」

「違います。あれは……」

あたしは大人しく家に帰ろうとしていただけ。それなのにあの人たちが……

「違うんだったら説明してみろ?」

「それは……」

説明にはリクの名前を出さなければいけない。

それはちょっと……

「言えないことか?」

「…………」

あたしは口を閉ざした。

澤田先生は「そうか」と渋い顔をすると、マグカップを持ったまま立ち上がり、窓の傍に歩き窓からの景色を眺めているようだった。

暫くして、一人の男の先生が澤田先生を呼びに来た。

先生は「大人しくしていろよ」とあたしを残して生徒指導室を出て廊下で男の先生と話しをしていた。

何の話をしているのかはここまでは聞こえてこない。

ドアが開くと、澤田先生が入ってきた。


「向こうは簡単に吐いたってよ」

「……そうですか」

何が話されていたのか想像でき、あたしは先生から顔を逸らす。


「へ~お前が男の為に喧嘩とは……まあ。あれだ。海道は顔も性格もいいしな。モテるのも分かるぞ。モテる彼氏じゃ上原も大変だな」

面白そうに話す先生をキッと睨んだ。

先生も所詮他人事なんだよね。

「それじゃ。もういいですか?」

「いいや。お前からの話しは聞いてないからな。何も話さないんじゃ喧嘩の原因の海道を呼ぶことになるが。それでもいいなら」

「先生。ズルいですよ」



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