その仮面、剥がさせていただきます!
「話しの概要はだいたい分かった。けど、当の本人に言わなくていいのか?」
「いいんです。先生も絶対に言わないで下さい」
リクを呼ぶと言われた時点で澤田先生に屈するしかなかった。すべてを話してリクには絶対に知らせるなと念押しする。
「健気というか……男はこういう馬鹿な女に弱いのかもな」
「馬鹿は余計です。それに、健気でもないし」
リクと微妙な関係なのに、これ以上こじれることがイヤなだけ。
それに……
誰にでも優しいリクがこのことを知ったら、どういう行動に出るのか不安だったのもあるかも。
女同志のケンカだから、あたし一人を庇ってくれるとも限らない。
「そう言えば、上原引っ越しするのか?今日お前の母親から住所の変更の件で学校に電話がかかってきたてぞ」
お母ちゃんの行動力の速さに内心ビビる。
「もう変更したんですか?」
「なんだ。知らなかったのか?」
今日中に決めるって言ってたけど。早すぎやしませんか?
これはきっと、あたしにイヤと言わせないためのお母ちゃんの作戦の一部なのだろう。
「上原は一人暮らしするのか?」
「……はい」
ああ。イヤだ。
「高校生の一人暮らしか」
「なんですか?」
ニヤニヤしながらあたしを見る先生を怪訝な目で見返す。
「あんまり、海道と仲良しこよしするんじゃないぞ」
「そんなこと……絶対にしませんからっ!!!」
大人はどうしてそんな心配ばかりすんのよ!
あたしはこれからどうやって食べていけばいいのか考えたら憂鬱だっていうのに……
あ……そうだ。
「先生って独身ですよね。独身の一人暮らしですよね!?」
独身ってところを強調して言う。
「ま、まあ。そうだが。それがどうした?」
「夕食とかどうしてます?学校のお昼とか?まさか自分で作ってるとかって……それはないですよね」
「先生はちゃんと自炊してるぞ?お弁当だって手作りだ。今流行ってるだろ。弁当男子って言うんだったか」
意外だ……
澤田先生も飢え死にすることなく当たり前のようにスマートに生活しているなんて……
「上原は料理できないのか?」