その仮面、剥がさせていただきます!
引っ越しの片づけもそこそこに、山になった荷物の中から明日のリクとのデート?に着ていく服を選ぶ。

かといって、女の子らしい洋服も持っているはずもなく、七分丈のパンツに、ロンT。その上にチェックのシャツを羽織るというラフなスタイルに決まった。

こんなことなら、ワンピでも買っとくんだったな。

後悔先に立たず……



そして次の日、本来なら一日がかりでこの荷物たちを整頓するところだけど、あたしは出かける準備をした。

家を出る前に、玄関で靴を履きながらリクに電話をかける。

「リク。もうすぐ着くけど、リクの部屋って何階の何号室だったっけ?」

<リツ覚えてないの?5階の518号室だよ>

518ね。

部屋まで行くといい、まんまと部屋の場所を聞き出すことに成功すると、あたしは玄関を出て自分の部屋の番号を確認した。

昨日はこれまた色んなことが頭を駆け巡って、自分の部屋ですら把握していなかった。


玄関のプレートの部屋番号は519。


ん?5……19。


リクは518で、ここは519……

数字の並びは、518の次は519だよね?確かにそうだよね?



もしかして、もしかすると……



と、隣!?リクの部屋は隣!!



慌てて隣の玄関の前に行って同じプレートを確かめる。


確かに『518』となっている。


「ウソでしょ?……これは夢だよね」

はっはっはっ。笑える夢だ。

「あれ?やっぱりリツの声だ。よく入って来れたね」

「わっ?」

予期しないタイミングで玄関から顔を出したリクに驚くあたし。


「ここロック解除しないと中に入れないでしょ?」

し、しまった……

あたしは一度もしたことなかったけど、リクが入る時も、引っ越ししてきた時も、マンションの入り口のとこで何かゴソゴソしてたような……

「たまたま開いてた……」

「そうなんだ」

何の疑いも持たず、リクはあたしの嘘方便を信じるとニコリと微笑む。



久しぶりのリクの笑顔に、あたしの胸はギュッと掴まれたみたいに苦しくなった……


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