その仮面、剥がさせていただきます!
あったかくて自分とは違う大きな手は男の人を思わせる。

それでいて、優しさを感じるリクの手のひらの感触。

肩が当たるほど近くになったリクとの距離に、あたしの心臓はバクバクしっぱなしだった。

リクにそれが伝わらないように、平常心を作る。


「それで、どこ行くの?」

あたしの問いかけに、リクは自信満々に例の雑誌を広げて見せた。

「今日はこれ全部制覇するから☆」

雑誌には『彼女とデートするならここで決まり』という見出しで、お洒落なデートコースが満載だった。

「ここに行くの?」

「そうだよ」

ニッコリと微笑むリク。

でたな。王子スマイル。

「でも、ここって大人のカップルが行くようなとこでしょ?」

「そうかな。でも、高校生がダメだってどこにも書いてないし」


そうじゃなくて。

あたしには場違いだって気づけよ!


「そうだ。あたし行きたいところあるんだ。そこでもいい?」

「そっか……なら。リツの行きたいとこにするよ」

一件落着……

はあ。なんかあたし、デートする前から疲れてるよ。



かと言って、これといった行きたいところなど考えているはずもなく、あたしはノープランで電車に乗った。

どこに行くのかなと楽しみにしているリクが隣にいる。


困った……


電車の中でもリクは目立っていて、友達同士でこっちを見ながら何か話している女の子たち。リクのことをチラチラ見ている二十代の女の人。カップルで乗ってる女の子まで彼氏じゃなく、目はリクの方に向いていた。

居心地わるいよ。

早く電車を降りたい。

電車を降りたからといって、この状態は変わらないんだけどね。

イヤだイヤだと言っても何も変わらない。だったらいっその事、自分が楽しいと思えるところに行ってやれ~


もう半分やけくそで、目的の駅に着くとあたしはリクの手を引いて電車を降りた。










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