その仮面、剥がさせていただきます!
憂鬱な気分でまた列の最後尾に並び、適当に二つの飲み物を買うと、リクが待っているベンチに向かった。

リク大丈夫かな?

リクには「気分悪そうだからもう帰ろうか」とでも言って、早く帰ろう。リクだってその方がいいに決まってるし、時間内に帰らないと、それこそ拓にぃに何をされるかわからない。

リクが座っているベンチの傍まで来るとあたしは立ち止まった。

座っているリクの前に、二人の女の子が立っていて、親しげに話している。

知り合いかな?それとも元カノ?

これ以上近づくことが出来なくて、両手に紙コップを持ったまま、あたしはその場に立ちすくんでいた。



こっちから見ると後ろ向きに座っているリクの表情は分からないけど、女の子の方は綻んだ笑顔をリクに向けている。

暫くすると女の子たちはリクに軽く会釈をしてから、離れ際に下の方で小さく手を振っていた。

リクは手を振り返すこともなく、女の子が立ち去った後にきょろきょろと辺りを見回していた。

「あ。リツ~」

あたしを見つけたリクは立ち上がって大きく手を振る。

「もう大丈夫なの?」

コップのジュースが零れないように、注意しながら歩いていると、リクがあたしの方に駆け寄ってきた。

ジュースの入った紙コップを一つリクに渡す。

さっきの女の子たちは誰だったんだろ?何を話してたんだろう?

「次は何に乗る?」

絶叫系はだめだけど……とリクは申し訳なさそうに言うと、ジュースの入った紙コップに口を付けた。

「もう帰ろうかと思って」

「最初がジェットコースターだったから駄目だったけど、他の乗り物なら……」

リクは自分が乗れそうなアトラクションを探すように、遊園地の中を見回す。

「さっき家から電話があって、帰らなきゃいけなくなったの。だから、来たばかりで悪いんだけど」

二つ並んだベンチの傍までくると、空いている方のベンチに座って持っていたジュースを飲んだ。

甘い味が口の中に広がる。


少し園内を散策してから電車に乗ろう。

それでも拓にぃに指定された時間には十分間に合う。


リクもあたしの横に座ると、同じようにジュースを飲んだ。


「帰らなきゃいけないなら、しょうがないね。けど、あと一つだけ乗っていこう」

空になった紙コップをごみ箱に捨てると、リクはあたしの手を掴んで強引に立たせ、歩き出した。

「何に乗るの?」

「あれだよ」

リクが指さした方を見ると、そこにはゆっくり回る観覧車があった。


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