その仮面、剥がさせていただきます!
ちょっとやりすぎたかな……と反省しつつ、俯いているリクの顔を覗き込むと、リクはぎゅっと目を閉じていた。

「ごめんごめん。そんなに怖がると思わなくて」

冗談交じりにあたしはリクの肩を叩くと、その振動に驚いたのか、こともあろうかリクはあたしに抱きついてきた。

「わっ」

今度はあたしが驚いてリクを突き飛ばそうとすると

「リツ!お願いだから動かないで……」

とリクの情けない声が耳元で聞こえた。

リクに抱きつかれたあたしはそのまま固まった。

正確に言えば、しがみつかれているんだろうけど、あたしの頬はリクの肩にぎゅっと押し付けられてるし、背中に回ったリクの手に力が入ると、あたしとリクの距離が更に縮まる。

二人きりの静かな空間に、リクの息遣いがすぐそこで聞こえている。

この状態でドキドキしないわけないじゃない!

「ええっと……」

何か話さないと、あたしの心臓が許容範囲を越えてしまいそうだった。

「リツ……」

「な、なに?」

「俺のことキライになった?」

「そ、そんなことはないけど……」

リクにとって自分が作り上げている『カッコいい彼氏』という理想像には無い場面なんだろう。

そんなこと心配する前に、今のこの状況をなんとかしてっ!

リクの爽やかすぎる香りが鼻を刺激して、益々ドキドキが止まらなくなる。

「リツ……」

あたしの名前を呼ぶリクの掠れた声。

リクが喋る度に息が耳元に掛かって身体がゾクッと震えた。

「も、もう少しで観覧車のてっぺんだから、あと半分だよ」

頑張ってという意味を込めて、リクの背中に手を当てて擦ってあげる。

この観覧車遅いのよ。もう少し早く動いてよ!!

文句を言ったところで何も変わるはずもなく、緩やかな一定の速度で頂上に達した。

「リツはこんな俺でもいい?」

「あのね、こんなことぐらいじゃ誰もキライになんかならないよ。ってか寧ろリクも普通の人間だったんだってちょっと安心したぐらい」

何でも出来るスーパー王子ぐらいに思ってたあたし。

完璧な人なんていないのにね。

「俺のことロボットだって思ってたってこと?」

「それに近いかも……」

あたしがそう答えると、リクの身体が小刻みに揺れた。

どうやら笑っているみたいだった。

背中に回っていた手が緩むとリクの身体が離れる。

高さからの恐怖が笑ったことで半減したと思ったあたしは、ホッとして肩の力が抜けた。


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