その仮面、剥がさせていただきます!
良かった……

一時はどうなることかと思ったけど、あたしの心臓よ、よくぞ持ちこたえた。

リクの背中にあった手を今度は自分の胸に当てると、大きく息を吸い込んだ。

「もう大丈夫だよね」

顔を上げるとまだ近くにあるリクの目と目が合って慌てて逸らす。

しがみつかれていた時より近い気がして、カッと顔が熱くなった。

その至近距離で肩に手を置かれ、ビクンと身体が反応してしまう。

ゆっくりと逸らした目を戻すと、真っ直ぐあたしを見るリクがいた。

な、なに?

くっきりとラインの入った大きな瞳があたしを捉えていて、そのキレイすぎる顔立ちに見惚れてしまいそうになる。

いかんいかん。

そう頭では思っているのに、あたしの目はリクから逸らすことができなくて、瞬きを繰り返した。

「リ……ク?」

やっと出た言葉。

ええっと。抱きつかれた時も驚いたけど、今のこの状況って……

あたしの肩に置かれていたリクの手が後頭部に移動して、そのまま引き寄せられると今度はリクの胸の中に顔が埋まる。

これって抱きしめられてる?

それともまだ怖いから?

あたしはリクの行動の意味が分からず、それでも高い所が苦手なリクのことを突き飛ばすこともできなくてされるままになっていた。

「さっき俺に話しかけてた女の子たちのことだけど。あれはなんでもないから」

あたしが見ていたことに気付いてたんだと思って「うん」と返事をする。

気にしてるって思ってたのかな?

リクが女の子に話しかけられるのって、珍しいことじゃない。と思う。

だから、大して気に留めてもいなかった。

「リツと一緒にいるのに、他の子と話ししてごめん」

「べ、別にいいよ。そんなのあたしは気にしないし」

「そっか……なら良かった」

そういうとあたしを自分の身体から離す。

なんだったんだろう……?

不思議そうにリクを見るとリクは何かを思い出したように「あ……」と声を漏らした。

「そう言えば、昨日俺の隣の部屋に高校生の女の子が引っ越してきたらしいんだけど……」



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